「研修は毎年やっているが、正直、変わった実感がない」

人事のご担当者から、こう打ち明けられることがあります。予算をつけ、日程を押さえ、全員を集めた。それでも三か月後には元に戻っている。

変わる会社と変わらない会社の違いは、講師の質でも研修時間の長さでもありません。受け取った内容を、その人の言葉に翻訳する時間があったかどうかです。

「教わった」だけでは、現場で使えない

話し方の研修を例にします。

語尾を伸ばさない、結論から話す、間を取る。こうした技術は、その場では理解できます。けれど翌日、現場で使おうとすると手が止まります。技術は覚えていても、自分が何を話すかが決まっていないからです。

中身が空のまま器だけを整えても、人前に立った瞬間に元の話し方に戻ります。当然のことだと思います。

変わる会社がやっていること

実際に変化が続く会社には、共通点があります。

  • 研修のなかで、受講者一人ひとりが自分の経験を掘り起こす時間を取っている
  • その経験を、その場で言葉にして、人の前で口に出している
  • 持ち帰るものが「知識」ではなく「自分の原稿」になっている

知識は忘れます。けれど、自分で掘り起こして、人前で口に出した自分の話は忘れません。研修が終わったあとも、その人の中に残り続けます。

私が研修で最も長く時間を取るのが、この掘り起こしの部分です。技術の説明よりも、一人ひとりへの問いかけに時間を使います。遠回りに見えて、これがいちばん近道だからです。

発注の前に確認したい、三つの質問

研修会社を選ばれるとき、次の三つを聞いてみてください。答えの中身よりも、答えられるかどうかで見えてきます。

  • 受講者が当日持ち帰るものは、具体的に何ですか
  • 講師が話す時間と、受講者が口を動かす時間の比率はどれくらいですか
  • 研修が終わったあと、現場で最初にやることは何になりますか

ひとつめに「知識」「気づき」とだけ返ってくる場合は、注意が必要です。持ち帰るものが形になっていないと、翌日には薄れてしまいます。

ふたつめは、意外と差が出ます。講師が話し続ける研修は、受講者にとっては聞くだけの時間です。人前で口に出して、他の人の反応を受け取った経験だけが、現場で再現できます。

三つめは、研修を単発で終わらせないための質問です。次の一歩が決まっていれば、効果は現場に持ち越されます。ここまで設計されているかどうかが、変わる会社と変わらない会社の分かれ目になります。

まとめ

  • 研修が定着しないのは、講師や時間の問題ではない
  • 技術だけを教えても、話す中身が空なら現場で使えない
  • 変わる会社は、受講者が自分の経験を言葉にする時間を取っている
  • 持ち帰るべきは知識ではなく、その人自身の言葉

研修を検討されるときは、ぜひ「受講者が自分の言葉を持ち帰れる設計になっているか」という視点でご覧になってみてください。それだけで、選び方が変わるはずです。

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