「今年も、内定辞退が続いてしまった」
「最終まで残った学生に、逃げられてしまう」
「条件は他社に負けていないはずなのに」

採用のご相談をいただくとき、いちばん多く伺うのがこの声です。

倍率1000倍といわれるアナウンサー試験を経験し、いまは企業の採用の現場に関わっている私から見ると、内定辞退が続く会社には、ひとつの共通点があります。待遇でも知名度でもありません。面接官が話す言葉です。

学生は「条件」だけで選んでいない

面接は、会社が学生を選ぶ場だと思われがちです。けれど学生の側も、同じ時間、目の前の面接官を見て「この人と働きたいか」を判断しています。

そのとき学生の記憶に残るのは、事業の説明でも福利厚生でもありません。面接官が自分の言葉で語った、その会社での出来事です。

「うちは風通しがいい会社です」と言われても、何も残りません。けれど「三年前、私の企画が通らなかったとき、部長が一緒に役員に説明しに行ってくれたんです」と言われたら、その会社の空気が一瞬で伝わります。

面接官が語れないのは、準備していないから

ここで多くの会社が誤解されています。「話が上手い人を面接官にすればいい」と考えてしまうのです。

しかし必要なのは話術ではありません。語る材料を、あらかじめ掘り起こしてあるかどうかです。

面接官のみなさまに「入社してよかったと思った瞬間を教えてください」とお聞きすると、最初はほとんどの方が黙ってしまわれます。でも十分ほど一緒に振り返ると、必ず出てきます。誰にでも、自分だけの出来事があるからです。

それを言葉にして持っておく。ただそれだけで、面接の場の空気が変わります。私が「共感ストーリー®」と呼んでいるのは、この一人ひとりの中に眠っている事実のことです。

面接官の言葉を掘り起こす、三つの問い

研修では、面接官のみなさまに次の三つをお聞きしています。会議室で十分あれば足ります。

  • この会社に入って、辞めようと思った時期はありますか。何が引き止めましたか
  • 直近の一年で、いちばん嬉しかった仕事上の出来事は何ですか
  • いまの部署に、尊敬している人はいますか。その人のどんな場面ですか

ひとつめの問いに驚かれる方が多いのですが、これがいちばん効きます。順調だった話よりも、迷ったうえで残った理由のほうが、聞き手には誠実に届くからです。

そしてこの場では、もうひとつ大事なことが起きます。面接官同士が、お互いの答えを初めて聞くのです。「あの人にも、そんな時期があったのか」と。採用のための時間が、そのまま社内の関係にも効いてきます。

逆に、面接の場で避けたいのは「何か質問はありますか」で終わってしまうことです。最後の数分は、面接官が自分の言葉で会社を語る時間に充ててください。学生が家に帰って親御さんに話すのは、その部分です。

まとめ

  • 内定辞退の原因は、条件よりも「面接官の言葉」にあることが多い
  • 学生の記憶に残るのは説明ではなく、その会社で実際に起きた出来事
  • 必要なのは話術ではなく、語る材料を事前に掘り起こしておくこと
  • 材料は面接官一人ひとりの中に、すでにある

採用は、会社の魅力を新しく作る仕事ではありません。すでにある魅力を、社員が自分の言葉で語れる状態にする仕事です。

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